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エルガーの【威風堂々 第1番】

テーマ:コラム

◆独学で作曲を覚えたエルガー◆

エドワード・ウィリアム・エルガーは1857年にイギリスで生まれ、1934年に77歳で亡くなりました。

父は楽器や楽譜の販売、ピアノの調律をしていたので、その影響でヴァイオリンやピアノを覚えました。

15歳で一般的な教育を修了しましたが、家が貧しいためその後、専門的な音楽学校へ通うことはできず、手に入る本を片っ端から読んで音楽理論などを独習しました。

父の店を手伝う傍ら、ピアノやヴァイオリンを教え、22歳で指揮者の職を得ます。

32歳で結婚したのが転機となり、妻のすすめで作曲家へ転向しました。


◆人々に愛される【威風堂々 第1番】◆

『威風堂々 第1番』は、オーケストラ演奏用に書かれた7分弱の作品です。

エルガーの祖国イギリスだけでなく、アメリカなど、世界中で愛されています。

日本では、入学式や卒業式の入退場曲として、また大晦日のコンサートの曲目としても演奏されています。

何故、『威風堂々 第1番』はこれほど多くの人に愛されるのでしょうか。

次にその秘密を読み解いていきましょう。


◆威風堂々たる【神】を表現した2つのキー◆

エルガーは『威風堂々 第1番』を作曲するにあたって、この曲の鍵となる2つの『調(キー)』を選びました。

DメジャーとGメジャーです。

クラシック音楽でこの2つの調は、伝統的に【神】を表すキーとして多くの作家家が使ってきたものです。

Dメジャーはこの曲の冒頭に使われていて、神々しく荘厳な雰囲気を醸し出しています。

そしてGメジャーで書かれた中間部は弦楽器が最もよく鳴り響き、堂々と聞こえます。

終盤はまたDメジャーになり、キーが高くなったことでより華やかに、曲が昇華されるように終わります。

つまり、神の壮麗と威厳を現すようなDとGの2つのキーが交互に奏でられるために、聴く人が飽きることなく、気分がどんどん高揚していく構成になっているのです。

これがエルガーの狙いであり、またこの曲が人々に愛され続ける理由なのでしょう。

因みにDはゼウス神(Deus)、Gは神(God)を表す言葉の頭文字と一致しているとも言われます。


◆国王の太鼓判◆

この曲は、エルガーが44歳の時に作曲されました。

演奏会場には当時の英国皇太子が来席していました。

皇太子は中間部をたいそう気に入って『歌詞を付けてみてはとうか?』と提案しました。

アーサー・クリストファー・ベンソンが作詞して、翌年、皇太子が国王エドワード7世として即位した際に【載冠式頌歌】として使われました。

それが、後世に残る【希望と栄光の国】の誕生でした。

この歌は【イギリス第二の国歌】とも呼ばれるほど国民に親しまれ、今も毎年ロンドンで開催される音楽祭のフィナーレに合唱されたり、ラグビーのイングランド代表チームの入場曲としても使われています。


◆歌詞の和訳◆

希望と栄光の国 自由の母よ

如何に汝を賞揚せん

誰ぞ汝により生まれ出でん

汝の領土は更に拡大を続け

汝を強大ならしめた神は

今も汝を強大ならしめん


曼荼羅アーティスト Petit Piano