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エジプト十字【アンク】
テーマ:神聖幾何学模様
アンク(ankh)とは、古代エジプトで使われていたヒエログリフと呼ばれる象形文字の一つで、【生命】や【人生】、【生きる】と言った意味で使用され、【生命の鍵】(Key of Life)とも呼ばれていました。
アンクは【エジプト十字架】とも呼ばれており、不死の生命を与える役割以外にも、悪い事から身を守る魔除けの効果も果たしていました。
十字の上部に丸い輪がついた形で表され、エジプトの王族達の墓や多くの遺跡の壁面などにはエジプトの神々がその輪の部分を手に持っていたり、手に掛けていたりする姿が多く描かれています。
古代エジプトでは文字に不思議な力が宿ると考えられていたそうで、王族達は自身の名前にアンク(ankh)の文字を入れる事で永遠の生命への願いを込めたと言われております。
黄金のマスクで有名な【ツタンカーメン】も正式な名前を【Tut-ankh-amen】(トゥト・アンク・アメン)と言い、名前の中に『アンク』(ankh)が入っています。
アメン(amen)は太陽神ラーの別名であり、トゥト(Tut)は姿という意味です。
すなわち【太陽神ラーの生命を象徴した姿】と言った意味の名前なのだそうです。
【アンク(エジプト十字)の形の起源】
十字の上部が輪になっているアンクの形はどこから来たものなのでしょうか?
一説にはサンダルの紐からきた形なのではないかと言われています。
エジプト十字の上部の輪はサンダルの踵回りを締める部分で、輪の下に続く垂直なラインは足の甲から親指と人差し指の間を通ってサンダルの底へ繋がる部分であり、横のラインは足の甲の両側左右を通ってサンダルの底に繋がる部分だと言われています。
サンダルの紐がどうして【生命】を表すかについては、エジプトには毒を持つサソリが沢山おり、裸足で踏みつけると死に至る危険があった為と言った説もありますが、はっきりとは分かっておらず、エジプト学者達の頭を悩ませている事の一つだそうです。
当時と現在では生活習慣や考え方などかなり違っていたでしょうし、その頃の言語や概念を理解する事は難しいのでしょう。
アンクは、ある説では古代エジプトで豊穣や母性の神、かつ死者を導く役目もあり広く信仰されていた【女神イシス】のシンボルマークでもあります。
女神イシスがエジプトの王を災いから守る為に使われていたとも言われていたり、イシスのベルトのバックルだったという説もあります。
そのため、女性を表す記号(十字の上に丸が描かれているマーク)も、アンクが元になったとも言われています。
【アンクが象徴する意味】
●人生 ●太陽 ●安定 ●活力 ●死後の世界
【アンクの色による意味の違い】
●赤…生命の再生
●青…豊穣と生殖力
●緑…癒し
●白…儀式的な純粋性を表し、祭礼用として使われる
●黒…死からの復活を暗示
【アンクの意味するもの】
アンクは十字架の一種です。
十字架が象徴するものは非常に複雑であり、多種多様な意味を持っています。
十字架は、人類を表すものとして、また地上と天国の収束した状態を表すものとして、あらゆる宗教や文化の中に見出すことができます。
アンクは古代エジプトの持ち手付き十字であり、【生と死の鍵】です。
まず、アンクの上半分を見てみましょう。
アンクのてっぺんは一つの輪になっています。
この【始まりも終わりもない輪】が表すのは、天上の世界、そしてエジプトの太陽神ラーの魂です。
この輪は、神々がアンクを運ぶ際の持ち手となります。
この持ち手は、日の出や日没の太陽が地平線にかかるように、地上にかかっています。
アンクのこの横棒は【物質世界】を象徴しており、この地上世界に縛られない存在としての人類の視点が生み出した架空の地平線に他なりません。
人間が地上に留まっているのは仮初めのことに過ぎず、連綿と連なる進化の鎖の中のほんの一部でしかないことを、古代エジプト人はよく知っていたのです。
アンクの輪は縦の軸と繋がっており、この軸は私達の魂が物質世界へ降りてきた状態、及び大元の世界へ上昇していく道の両方を象徴しています。
これは人間が辿らねばならない戻り道で、最も低いところから始まり、新しい命への再生を繰り返すたびに、自らの魂を上昇させ続けてゆきます。
その過程で、人間は人間であることの自覚に目覚めるのです。
つまり、人間は自らの判断力を鍛えてゆくわけですが、その過程において頼りにするのは、知性・上昇への意志・自らの最もスピリチュアルな(神聖な)部分である上位自我との一体感なのです。
また、この鍵は、死者の世界、そして永遠への深遠な感覚へといざなう扉を開けるものでもあります。
葬儀の流れにおいて、アンクは持ち手の輪を持たれ、墳墓の扉の鍵を象徴し、また両目の間に置かれることで、秘密を守ることを私達に課します。
さらにアンクは、中央の結び目によってあらゆる物を結びつける魔法のつながりとも考えられています。
この場合は、【イシス女神の結び目】と呼ばれ、『連結』という意味を持ちます。
ヒンディー語の【yug】と似た意味です。
イシスは、オシリス・イシス・ホルスからなるエジプト三位一体のうち2番目の神です。
イシスは橋渡しを行う神です。
イシスは愛と生命の女神として、夫である神秘の神オシリスのバラバラになった死体を一つに治します。
同様に、人間も自らの意志を鍛えることにより、上位の知恵へ至ります。
これを実現するにあたって、人間は自らの内なる人格・真の人格の中の不死性を認識し、そことしっかり繋がりを保つことが必要となります。
曼荼羅アーティスト Petit Piano