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ケルティック・クロスとは

テーマ:神聖幾何学模様

最も有名なケルトのシンボルは、【ケルティック・クロス】(ケルト十字)です。

アイリッシュクロス・アイルランド十字などとも呼ばれます。

ケルティック・クロスは、ケルト系キリスト教のシンボルになっている十字架です。

ケルトの太陽信仰とケルティック・ノット、そしてキリスト教のラテン十字が組み合わさって出来ています。

ケルト十字は十字架に円を重ねたもので、特に十字架部分にケルト独特の編み目模様が刻まれているのが一般的です。

ケルト系キリスト教の象徴となっているケルト十字ですが、単にキリスト教の宗教的シンボルというだけではなく、大きな愛や啓示・加護をもたらすものとして愛されています。

この十字架の中には、人の背丈を超える大きなものがあり、高十字架(ハイ・クロス)と呼ばれています。


【ケルトと宗教】

ケルト人の宗教は元々、自然崇拝の多神教で、ケルト系民族が拡散していった様々な地域を合わせた場合、合計で300以上の神や女神が信仰されていたと言います。

ただし、地域をまたいで広く共通して信仰されていた神々は限定されていました。

また、霊魂の不滅など、ある意味日本人に感覚的に近い信仰を持っていました。

しかしその後、紀元前5世紀頃にはケルト人の間でもキリスト教が広まっていくこととなり、多くのケルト人達はキリスト教徒となりましたが、ケルトの宗教的観念や伝統の一部は、ブリテン島やアイルランドを中心に残りました。

ケルト人達の間で広まったキリスト教は、キリスト教とケルト文化が融合した【ケルト系キリスト教】と呼ばれ、現代のケルト系キリスト教(ケルト教会)は、【自然愛】【教義性の欠如】【他宗教への寛容と友好

性】を強調しているという特徴があります。

また、ケルト十字は、このケルト文化とキリスト教の融合を象徴しているとされます。


【ケルトの死生観】

ハロウィンの起源はヨーロッパのケルト文化にあります。

神は自然に宿り、『死』と『生』は地続きであると考えるケルトの文化は、日本人にも馴染みやすいものです。

その考え方は、現代を生き抜くヒントにもなるかもしれません。


ケルトの暦において1年は10月31日に終わり、11月1日に始まります。

全ての亡くなった者たちが、この日に蘇ると信じられてきたのですが、実はこれがハロウィンの起源【サウィン】です。

現在ハロウィンを象徴する存在となったジャック・オー・ランタンも、元々はアイルランドでカブを使って作られていたものがアメリカに渡り、当時生産量が多かったカボチャが使用されるようになったのだといわれています。


ケルトとは、アイルランド・スペイン・フランスの一部・スコットランド・ウェールズなどに伝わる古代の歴史だけではなく、今、現在を生き抜くための新しいものの考え方を教えてくれる哲学みたいな存在ではないでしょうか。

キリスト教が伝わる以前の、神様は自然の中に宿るという考え方、またこの世とあの世は連続的であるとし、『死』と『生』の境界線がはっきりしないという考え方、何事も断定しない、世界は変化の中にこそ存在するのだという考え方は、現代を生きる私達が忘れた重要な何かを教えてくれます。


ケルトの暦において、1年は4つの季節…冬『サウィン』・春『インボルク』・夏『ベルティネ』・秋『ルナサ』に分かれます。

ハロウィンはこの『サウィン』が起源で、ここで収穫の秋が終わり冬が始まり、死者の魂がこちら側である私達の世界に戻ってくるというものです。

そしてその瞬間、【過去】【現在】【未来】の垣根は全て吹き飛び、ありとあらゆるものが混ざり合う中で、本当の再生が始まるとされています。


ヨーロッパ・そしてアジアの周辺諸国には、そういった古代人の考え方を象徴するような【始まりも終わりもない回転を表現する文様】を表現した遺跡が沢山残されています。 

確かに死者がこの世に戻ってくるというコンセプトは、日本のお盆や先祖を敬う気持ちにも通じるし、ケルト模様のいくつかは日本の【縄文土器】の模様を思い出させます。


さらにケルト人の、合理主義ではなく、明瞭な答えやシステムなどを求めないところも、日本人と非常によく似ています。

ケルト人は文字を持たなかったそうです。

書いて断定してしまうのではなく、口承の文化を重要視しました。

そして、どちらかというと【以心伝心】的なもの…例えば『何となく肌があう』『気配』といった、断定できない何かを重んじてきました。

そういう人達が実は世界の中心部ではなく周辺、特に島国には多数存在していて、日本とアイルランドはその代表格だと言えるでしょう。

この2つの国は遠く離れているけれど、お互い響き合う何かを持っているのかもしれません。


そのせいか日本人のケルト文化への興味は尽きません。

懐かしさや既視感・例えばぼんぼりの明かり・障子を通した光など直接光ではない光を美しいと感じる心…など。

日本の神話や伝説の中にも、ケルト同様、死後の世界は異界的存在に対しての恐怖だけではなく『親しみ』を表したものが多いのです。


曼荼羅アーティスト Petit Piano