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メメント・モリとは

テーマ:コラム

メメント・モリとは、『自分がいつか必ず死ぬことを忘れるな!』『死を想え!』という意味を持つラテン語の言葉です。

現代では主に【死を意識することで今を大切に生きることができる】という解釈で用いられることが多いです。

生きている者すべてに訪れる最期を意識させるこの言葉は、古代ローマから現代に至るまで、様々な人々にインスピレーションを与え、思想はもちろんのこと芸術作品などにも強く影響を与えています。


◆メメント・モリの起源◆

メメント・モリという言葉の起源は古代ローマにまで遡り、当時は警句として用いられていました。

戦に勝利した将軍が凱旋パレードを行う際、同行させた使用人に『メメント・モリ』と言わせることで『今日が勝利でも明日はどうなるか分からない』ということを思い出させていたとされています。

その後、キリスト教の影響力が強まるにつれて、メメント・モリは【過ぎ去っていく現世に固執し過ぎない】という道徳的な意味合いで中世のヨーロッパの人々に広く知られるようになりました。


◆中世の芸術作品におけるメメント・モリ◆

芸術作品においてメメント・モリが大々的に扱われるようになったのは、ペスト流行後の終末観が強まったルネサンス美術の時代であります。

この時代には『死の舞踏』と呼ばれる寓意画が盛んに描かれ、これらは【身分や年齢に関わらず、死は全ての生き物に平等に訪れる】という死の普遍性を人々に伝えました。

17世紀初頭のバロック美術でも引き続き主題としても多く用いられましたが、この時代の作品では『ドクロ』などの分かりやすいイメージだけでなく、花・蝋燭・時計といった、より抽象的なイメージにも落とし込まれるようになっていきました。


◆現代の解釈◆

故スティーブ・ジョブズ氏が2005年の米スタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチ【ハングリーであれ!愚か者であれ!】は、現代のメメント・モリの解釈において重要なものとなっています。

同氏は次のように述べています。


『自分はまもなく死ぬという認識が、重大な決断を下す時に一番役立つのです。何故なら、永遠の希望やプライド、失敗する不安……これらはほとんど全て、死の前には何の意味もなさなくなるからです。本当に大切なことしか残らない。自分は死ぬのだと思い出すことが、敗北する不安に囚われない最良の方法です。』


このことからも分かるように、現代においてメメント・モリは、【避けることのできない死という未来があるからこそ、今この瞬間を大切に生きることができる】という意味で捉えられています。


現代の私達にとって【死】という概念は、古代ローマや中世ヨーロッパと比べると幾分か遠い存在となっています。

しかし、新型コロナウイルスの世界的な流行や様々な情勢の変化により、改めて考える機会が増えてきているのも確かです。


曼荼羅アーティスト Petit Piano