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ケルティック・ノットとは

テーマ:神聖幾何学模様

この模様は一本の紐で出来ていて、【始まりと終わりが無い】のが特徴です。

この形を基本に、そこから様々に変化した模様が存在しています。

有名な書物である【ケルズの書】や【リンディスファーンの福音書】【ダロウの書】などの装飾にも使われたり、ローマ帝国でも床や壁などのデザインに使われていました。


【ケルティック・ノットが持つ意味】

ケルト人(紀元前5世紀から前1世紀にヨーロッパ中部・西部で活躍した民族)は文字を持たず、全ての知識を口承(こうしょう)で受け継いできました。

当然、書物もほぼ無いので記録も残っていません。

残されたシンボルや他の国からみたケルトに関する記述(有名なものではガリア戦記)などを後世の研究者や芸術家などが推測して、意味が与えられてきました。


【ケルティック・ノットに込められた意味】

始まりも終わりも無いケルティック・ノットには『永遠』や『魂の循環』などの意味が込められているとされており、円形の模様になるとそれらの意味が強く出てきます。

ケルト人の宗教観には【輪廻転生】があるので、こういった意味が込められていると信じられています。

ケルトの世界観を最もよく表しているものが美術、とりわけ【ケルト文様】と呼ばれるデザインです。

ケルト文様は、美しいアートとしてのデザイン性に加え、彼らの思想や世界の捉え方が凝縮されています。


【ケルト文様】は、紀元前5世紀頃からケルト民族の装飾美術に取り入れられるようになりました。

それからおよそ1000年後にケルト文化に流入してきたキリスト教の聖書写本にも取り入れられ、独自の宗教観を築き上げていきます。

このころに制作された【ケルズの書】は、ケルトの美学の枠を詰め込んだ、ケルト美術の最高傑作です。

今もケルトの魂を象徴するアートとして、アイルランドの国宝となっています。

近年、日本ではアイヌ文化のアートも再び注目されていますが、アイヌもケルトも自然への信仰や輪廻転生の思想が共通しており、文様にも多くの共通点が見られます。

それらは、21世紀を生きる私達にも強烈なメッセージを放ち続けているのです。


●渦巻き文様●

ケルトを代表する文様の一つです。

渦巻きという形こそ、ケルトの自然信仰の象徴である太陽をシンボル化したものであると同時に、ケルト神話のテーマである人間・動物・植物などの自然形態を抽象化・文様化したものであると言えます。

どこまでも広がりゆくような渦巻き・螺旋は循環する無限の生命への象徴でもあり、輪廻転生の思想を表しています。

もともと、自然界には直線の造形物というのは存在しません。

太陽はもちろん、水の流れ・草木のツル・そして広くは宇宙や銀河の構造も、渦巻きや螺旋が自然を形作っています。

ケルトの人達は、自分達が動物や植物とともに、その渦の中を漂っている存在と捉えていたのです。


●組紐文様●

一筆書きで、始まりも終わりもなく描かれる文様です。

渦巻きと同様、やはり循環する生命(輪廻転生)の思想や、人・自然・動物が一体となった世界観のイメージが表現されています。

日本の縄文時代のデザインにも通じるものがあり、古来から自然信仰を持っていた日本人の死生観にも共通しています。


●動物文様●

文字通り、動物を象った文様ですが、象形文字のように実際の動物をデッサンし、デザイン化したというよりは、自然への畏怖(いふ)や崇拝の観念を動物の形として表現したというべきものです。

通常、動物の形がよりシンプルになってデザインされる象形文字とは異なり、実在しないような神話的崇高さをもった異界の生き物のイメージを文様にしたように見えます。

見えないものを見るケルトならではの動物の文様で、自然や生き物への強い信仰が感じられます。


【キリスト教と唯一融合した土着信仰の秘密】

●ケルト十字(ケルティック・クロス)●

アイルランドはじめ、ケルト圏で見ることのできる特殊な十字架です。

アイルランドは5世紀に聖人パトリックによってキリスト教がもたらされると瞬く間に伝播し、敬虔なカトリックの国となりました。

しかし、人々は土着の信仰も同時に持ち続け、一神教であるキリスト教と本来相反するものであるはずの土着の自然信仰が融合することになります。

この十字はその象徴で、キリスト教の十字架に、ケルトの太陽信仰や輪廻転生の象徴である円が組み合わさり、さらに十字の中にも組紐文様による装飾が施されています。


また、ケルトの土着信仰では、豊穣を司る女神ブリギッドが崇められ、そのシンボルとしてもともとブリギッド・クロスと呼ばれる十字架が存在していました。

キリスト教の直線を組み合わせた十字架とは異なり、十字そのものが円や渦を巻くように編み込まれたこの十字は、太陽光線を表したものと言われています。

ケルトがキリスト教の十字架をすんなりと受け入れられたのも、こういった信仰がもともとあったからなのかもしれません。


【ケルト美術の最高傑作にして人類の至宝】

●ケルズの書●

ここまでご紹介してきたケルトの美術・世界観・思想・キリスト教との融合…それら全てが昇華され、人類に残る遺産として生み出されたアートの結晶が【世界で最も美しい本】と謳われるこの本です。

8世紀に制作されたキリスト教聖書の写本ですが、眩いほどに緻密に施された美しい装飾にはケルトの美学が詰まっています。

この本は、ヴァイキングの襲来やイングランドによるカトリック弾圧の時代も生き残り続け、今でもダブリンの『トリニティ・カレッジ』で見ることができます。

まさに、苦難の中でもアイルランド人達が失わなかったケルト魂そのものなのです。

なお、この本の制作秘話とヴァイキングの侵略からこの本を守り通した修道士たちの物語が、アニメーション映画『ブレンダンとケルズの秘密』というファンタジー映画になっています。

ストーリーはもちろん、細かい背景やひら舞う雪片にも細かくケルト文様が描き込まれ、現代のケルト美術作品としても楽しめます。


曼荼羅アーティスト Petit Piano